すみやきの小説置場

小説を書き始めた18歳から三十路の今に至るまでのすみやきの小説置場

小説

もし『虐殺器官』の美人チェコ語教師がひぐちアサの『おおきく振りかぶって』を読んだら 【『虐殺器官』二次創作】

1 「少し休憩しましょうか」 ルツィアは教科書を閉じ、キッチンへと向かった。 彼女のレッスンは一日あたり九十分間行われる。 といっても、九十分の間ずっと授業を行うわけではない。ある程度区切りのいいところで一回休憩を挟む。 この休憩というのが、彼…

やっぱり僕はモテモテにはなれない。

1 「死にたい」が最近の口癖だった。 口癖と言っても特定の誰かに伝えたり、叫んだり、しゃべったりするわけではない。 ただ一人きりで呟くだけに過ぎない。「あー、死にたい」って。 朝起きても、朝ご飯を食べても、登校中でも、授業中でも、昼休み中でも…

彼女は今日もハンバーグを食べる。

彼女が美味しそうに食べる顔が、僕は好きだった。はむっ、とほうばって、もむもむと一生懸命かむ。そして、飲み込む時に彼女が浮かべる笑顔、それが僕は好きだった。どんなに面白い漫画よりもどんなに夢中になるテレビゲームよりも、どんなにくだらないバラ…

青いリボンと学ランと

「すいませーん。絵画にご興味はお有りですかー」 今日も白川が僕の席に近づいてきた。手にはいつものようにコンビニ袋をぶら下げている。時計は一二時二十分を指していた。あるものは食堂へと走り、あるものは購買へとパンを求め、またあるものは持参した弁…

消しゴムとメリーゴーランド

食べ過ぎた、と思う。 馬鹿だと思う。本当に馬鹿だと思う。いつものお弁当だけでも十分なのに購買のパンまで食べてしまったのだ。調子にのってパンなんか食べなければよかった。それも『チョコレートホイップクリーム揚げパン』なんて食べなければよかった。…

秋田の古獣―ナマハゲ―

ちょっといきなりカミングアウトしていい? まあ「嫌だ」って言われてもカミングアウトしたいから言うけどさ。一つ約束して欲しいのはこれから何を言っても怒らないで欲しい。この話自体はすぐに終わるからさ。 あのね、実は僕――、「ナマハゲ」なんです。 う…

ボクノアイスルヒトハ、ココロツヨキヒト

春、四月。 僕は素敵な女性(ひと)に出会いました。 彼女は公園にいました。僕もその公園にいました。 彼女は桜の木の下にいました。舞い散る花びらは彼女の黒い髪を掠めていきました。 彼女を見たとき僕は思いました。一目惚れってあるんだということを――…

真面目以上不良未満

みんなで歌おう。心を一つにして 音楽室から聞こえる合唱。歌われている曲は『マイバラード』。合唱曲の定番だ。 歌っているのは二年四組。僕のクラスだ。 僕は屋上で自分のクラスの合唱に耳をすませていた。 なんで僕がこの合唱の輪の中に加わっていないか…

私の『先輩』

ダカラ、コノ図デイウトaカラbノ方向ニ活動電流ガ流レルワケデアリマシテ 静まった教室に生物教師の声が響く。 静かだからと言ってみんな熱心に聞いてるわけではない。今は昼休み明けの五時間目。みんなシエスタとしゃれ込んでいるだけだ。ましてやこのクラ…

私の屍とパズルのピース

「あの……好きです。その、えーと付き合ってください」 放課後の体育館裏。どうやら私は男子に告白されたようだ。 告白してきたのは田原幸弘という名前のクラスメイト。彼はクラスでは目立つほうではない。かといって空気でもない中途半端な存在。それが田原…

モリナガの陰謀

どうやら今日も私には恋人がいないみたいだった。 恋人と手をつなぐための右手には参考書が詰まった透明なプラスチックの鞄が握られているし、恋人とメールをするための携帯電話の受信ボックスにはウェブ会社からのダイレクトメールで埋めつくされている。 …

○○は魔女だったのです!【第7回ライトノベルワンシーンコンテスト佳作 お題「街角で出遭った少女は、実は魔女だった」】

小学生の時、マンガ雑誌の占いコーナーを立ち読みするのが好きだった。といっても、『絶対に当たる』という類いのページでなく、半分冗談で書かれたようなギャグページに近いような占いだ。 例えば、《おうし座のあなた! 廊下でバナナの皮をふんずけてすべ…

15年目の告白【電撃リトルリーグ お題 「15年目の告白」】

雨が降っていた。 勉強疲れを少しでも癒そうと、部屋の窓を開けたのに。まったく気が滅入ってしまう。もうこうなると勉強なんてどうでもよくなってしまうのだ。 勉強がしたい。ふとそう思って私は短大を卒業してから十年間働き続けた会社を辞めた。そして今…

幸せの時間

彼と一緒に歩く時間が唯一の幸せな時間でした。私が彼といっしょにいること。それだけで十分でした。 現在私達の住む世界は決して治安がいいとは言えません。一日の食べ物もままなりません。いつ殺されるかもわかりません。だから私は彼と一緒に食料を探すの…

嘘からでたマコト 【電撃リトルリーグ お題「嘘から出た○○」】

「マコトなんてもう死んじゃえばいいんだ!」 私がこう言った後、幼なじみのマコトは帰らぬ人となってしまった。十一歳。早すぎる死だった。 マコトが私宛に一通の手紙を渡してきた。小さなころから兄弟のように過ごしてきたマコト。当たり前のようにいつも…

真夜中の妨害者

「ねえねえひろえもん、ひろえもん?」 深夜一時、僕が自室で勉強しているといつも妨害してくる奴がいる。 「ねえねえひろえも~ん」 ちなみに僕の名前は「ひろえもん」なんかではない。まあわかってると思うが一応。 「ひ~ろ~え~も~~ん!」 ちなみに僕…

クリスマス・イブ

「サンタさん来てくれるかなあ」 ゆいちゃんはずっと外を見つめていました。今日は一二月二四日、そうクリスマス・イヴなのです。ゆいちゃんは暗くなってからずっとサンタさんを待っています。しかしまだ小さいゆいちゃんは夜遅くまで起きていることはとても…