すみやきの小説置場

小説を書き始めた18歳から三十路の今に至るまでのすみやきの小説置場

クリスマス・イブ

「サンタさん来てくれるかなあ」

 ゆいちゃんはずっと外を見つめていました。今日は一二月二四日、そうクリスマス・イヴなのです。ゆいちゃんは暗くなってからずっとサンタさんを待っています。しかしまだ小さいゆいちゃんは夜遅くまで起きていることはとても難しいものでした。ゆいちゃんのまぶたはどんどん重たくなっていきます。

 

「ゆいちゃん、ゆいちゃん」

 その声でゆいちゃんは目を覚ましました。ゆいちゃんが目を覚ますとそこには大きなお腹に白い髭、そして赤い服を着たおじさんが立っていたのです。

「サンタ……さん

 ゆいちゃんは赤い服のおじさんに聞いてみました。するとおじさんは優しそうに微笑みます。

「メリークリスマス。ゆいちゃん」

 サンタさんの声はとてもやさしい声でした。

ゆいちゃんは嬉しくなってサンタさんの大きなお腹に飛びつきました。

「サンタさん、サンタさん 来てくれたんだ あのね、ゆいね、サンタさん絶対来てくれるって思ってた。お母さんはうちにはこないって言ってたけど

 ゆいちゃんはサンタさんの服に顔をこすり付けました。サンタさんの服からは少し煙草のにおいがしました。

「ねえ トナカイさんもいるの

「うん。もちろん」

 窓から外を見てゆいちゃんは驚きました。外にはゆいちゃんが絵本の中でしか見たことなかった二匹のトナカイと大きなソリがあったのです。

「乗ってみないかい ゆいちゃん」

 サンタさんはゆいちゃんに言いました。

「えっ、いいの

「もちろん」

 ゆいちゃんは目を輝かせました。しかし、だんだんゆいちゃんの表情が暗くなってしまいます。

「だけど勝手に外に行ったらお父さんとお母さんに怒られちゃう」

 ゆいちゃんにとってお母さんとお父さんに怒られることはとても怖いことだったのです。

「大丈夫だよ。サンタさんはお母さんとお父さんに頼まれてゆいちゃんのところへやってきたんだ」

「本当

「うん。だから安心して」

 サンタさんはゆいちゃんを抱き上げてトナカイとソリの元へと向かいました。外に出たはずなのにゆいちゃんは全然寒くありません。なんだかとても不思議な感じです。

「じゃあ出発するよ」

 サンタさんがそう言うとソリはだんだん上へ上へと浮かんでいきます。

「うわあ。すごい……」

 ゆいちゃんの家がだんだん小さく見えていきます。そして町全体を見渡すことができました。ツリーのライトアップがとても鮮やかに映ります。

「きれい……」

 まわりの景色を見ているうちにゆいちゃんはまただんだん眠くなってしまいました。一緒に座っているサンタさんの体がとても暖かかったからでしょうか。まぶたはだんだんと重くなり、ゆいちゃんはそのまま眠ってしまいました。

 

「安藤由衣、無事保護完了」

 男は無線で本部に連絡をとった。

《ご苦労》

 本部からの声がスピーカーから聞こえる。

《早速状態を報告してくれ》

「顔と腕に数箇所の痣を確認。それに加えて火傷も数箇所。煙草を押し付けられたものだろう」

《栄養状況は

「最悪だ。ろくに食べ物を与えられてなかったんだろう。立って歩いていたのが不思議なくらいだ」

《把握した。引き続き任務を遂行せよ》

「了解」

 白い髭の男は無線を切り、煙草を吹かす。すると再び無線機に連絡が入った。

《橘拓己。三歳。近所住民から毎晩金切り状の悲鳴が聞こえるとの通報あり。三ヶ月まえから当人は目撃されていない。家族構成は母親との二人暮らし。早急対策の必要あり。至急向かってくれ》

 

 今年もサンタさんは大忙しなのでした。

 

 おしまい