すみやきの小説置場

小説を書き始めた18歳から三十路の今に至るまでのすみやきの小説置場

嘘からでたマコト 【電撃リトルリーグ お題「嘘から出た○○」】

「マコトなんてもう死んじゃえばいいんだ

 私がこう言った後、幼なじみのマコトは帰らぬ人となってしまった。十一歳。早すぎる死だった。

 

 マコトが私宛に一通の手紙を渡してきた。小さなころから兄弟のように過ごしてきたマコト。当たり前のようにいつも一緒にいたマコト。私はそんなマコトが大好きだった。だからマコトが手紙を渡してきた時は正直驚いたし、それと同時にすごくうれしかったのを覚えている。だけどマコトの口から出た言葉は思いもよらないものだった。

「これ。となりのクラスのやつが渡してくれって」

 急に目の前が真っ暗になった。

「それで……」

 なんとか気を落つかせ私は声を振り絞った。

「それでマコトは何も思わないの

 マコトの頭からは大きなはてなマークが浮かぶ。何を言っているの そう思っていることが顔を見ただけでわかってしまう。

「いや、別に」

 急に私の目から涙がこぼれ落ちてきた。悲しかったのか、悔しかったのか、その時の感情ははっきりとは覚えてはいない。ただ涙が私の知らないうちに溢れて落ちて、床に斑模様を作った。

 そこで言ってしまったのだ。マコトなんてもう死んじゃえばいいんだ……って。

私はマコトに向かってそうわめくと、まだ授業が残っているにも関わらず家へ帰ってしまった。その三日後だった。マコトが交通事故で亡くなったのは

 自分のせいだと思った。あんなことを言わなければ今頃はいつもと同じようにマコトと一緒にいられたのに。私は自室に隠って泣き続けた。そのうちに自分の部屋から一歩もでられなくなってしまったのだ。

 

 自分の部屋から出られなくなってからもう三年がたつ。

 カーテンを締め切ったまっくらな部屋にも慣れてしまった。毎朝母親と父親が交代で私と話そうと部屋をノックするのを無視することも慣れてしまった。そして小中学生の登下校時に耳を塞いでうずくまるのにも慣れてしまった。死ねばマコトに会えるのかなーとぼんやり考えることがある。だけど私には自殺する気力も勇気もありはしなかった。

 死んじゃえばいいんだ、それは確かに嘘だった。自分の思っていないことが思わず口に出てしまったのだ。それで結果マコトは死んでしまった。

「マコトなんてもう二度と会いたくない」

 私はもう一回嘘をついてみた。そうすればまた嘘が現実になるんじゃないかと思って。だけどいざ口に出してみると自分のやっていることのばかばかしさに笑ってしまいそうになる。

 

「へえ、僕は会いたいけどな」

 嘘だと思った。あの時と全く変わらないマコトの声がしたのだ。声の方へ振り向くとそこにはマコトが立っている。声も表情もあの時のマコトのままだった。

「マコト マコト……いや、嘘だよ。マコトは死んじゃったもん」

「死んだら二度と会えないって誰が決めたんだよ」

 マコトは優しく私に向かって微笑んだ。

「なんだよ。いきなり泣き出して」

「そうじゃなくて……私、マコトにひどいこと言った。だからマコト死んじゃった」

「俺は人に死ねって言われて死ねるほど器用な人間じゃないよ。あの時はたまたま運が悪かったんだ」

「ご……め」

「だからあやまんなって。いいか。お前が自分のせいで俺が死んだと思って落ちこんでんじゃないかって来てみれば案の定こんな状態じゃねえか。お前は何も悪くないんだよ。な。お前がいつものように笑ってねえと俺が苦しいんだっての。笑えよ。な」

 私は笑った。三年ぶりにマコトに微笑んだ。

「うん。それでいい。これで俺もあっちで安心してられるってもんだ」

「マコト……私好きだったんだよ。マコトのこと。今でも大好き」

 十四年間胸にしまい込んでいたことを私は今吐き出した。するとマコトは照れくさそうに頭をかく。このくせも変わらないらしい。

「……ありがと。じゃあな」

 そういうとマコトの姿は見えなくなってしまった。

 私は涙を拭った。そして三年ぶりにカーテンを開き、窓を開けた。久しぶりに浴びる太陽の光は心地よかった。私はそして部屋の窓を開けた。



「はい、これで無事に終了しましたよ」

「ありがとうございます」

「あの……これで本当に娘は部屋から出てくれるでしょうか」

「過去のトラウマを解消することが引きこもり脱出の近道ですからね。今回は娘さんが同級生を亡くしてしまった責任を感じているということを突き止めましたので、親御さんや当時のクラスメイトに協力を依頼し、ほぼ完璧な本人のDを作ることができました。当時のビデオテープから本人の声を忠実に再現した音声データを作ることもできましたし、これでトラウマを解消する手助けにはなるでしょう。……おっとこれは早速効果が出たようですね。我々はこれで失礼します」

 黒いスーツを来た男達はそっと玄関から外へと出る。その後だった。

 両親には聞こえたのだ。久しぶりに娘が部屋を出て、階段を降りてくるその音を