すみやきの小説置場

小説を書き始めた18歳から三十路の今に至るまでのすみやきの小説置場

○○は魔女だったのです!【第7回ライトノベルワンシーンコンテスト佳作 お題「街角で出遭った少女は、実は魔女だった」】

 小学生の時、マンガ雑誌の占いコーナーを立ち読みするのが好きだった。といっても、『絶対に当たる』という類いのページでなく、半分冗談で書かれたようなギャグページに近いような占いだ。

 例えば、《おうし座のあなた! 廊下でバナナの皮をふんずけてすべって転んでしまうかも!》とか、《てんびん座のあなた! トーストを口に加えて朝、家を飛び出したら、女の子とぶつかってしまうかも! そうしたら、クラスでその女の子と再び遭遇! 「お前は今朝の!」状態で転校生を紹介されるかも!》

 などなど……、まあ、常識的に考えて起こりもしないようなことが一二星座ずつ書かれてるものである。もはや、このページ担当の編集者が既にネタが尽きているのが見え見え。それでも苦し紛れに毎週この占いをどうにかやりすごしている様子がうかがえて、子どもながらに毎週楽しみにしたのを覚えている。

 その日もまたマンガ雑誌の発売日であった。僕はいつものようにどの連載を読むわけでもなく、まずその占いコーナーを開く。

《ふたご座のあなた! ふとしたことから豆腐の角に頭をぶつけてしまうかも!》

《乙女座のあなた! 生き別れの妹があなたの元をたずねてくるかも!》

 まあ、どっかで見たような展開ばっかりが続いている。いつもながらのやりすごしクオリティを堪能していると、自分のさそり座の項目に行き着く。

《さそり座のあなた! 街角であなたは少女に出会います。その少女は実は魔女だったのです。》

 普段だったら、半笑いでお馴染みの連載へとページを進めるところだった。しかし、なんだか僕にはその占いが気にかかるのだ。なんだろう。いつものように現実にはありえないことが書いてある。だけど、いつものように語尾が『かも』で終わらない。そして、『魔女』というのも気にかかる。ここまで現実とかけ離れている単語が出てくるのも珍しい。まあ、本当にページの担当者がどうにかしてしまったのだろう。僕はお気に入りの連載を読み終えると、立ち読み場所の本屋を出ようとする。

「よう!」

 僕を呼びかける声で彼女に気づく。一瞬、男子にも見えてしまうくらいのショートヘアに小麦色に日焼けした肌。そして、地域のスポーツ少年団のジャージを着用している彼女はどこの誰がみても活発的なスポーツ女子だろう。特に仲がいいわけではないが、なぜか毎年クラスが一緒っていう同級生、ってのは一人や二人いるもので、彼女もそんなクラスメイトの一人だった。

「ねえ、君」

「……どうしたんだよ。私の顔になんかついてる?」

 彼女の頬が赤くなった気がする。けど、その赤みは日焼けによるものなのか照れているのかはその時の僕にはわからなかった。

「君は……魔女じゃないよね」

 彼女はさっきまで呼んでいたマンガのキャラのように『キョトン』としていた。もしも、彼女の様子を写真に撮ったらそのまま、実写版アニメに使えるだろう。

「何か悪いものでも食べた?」

 こんな変な質問をするクラスメイトにも普通に接してくれる彼女は、けっこういいやつなのかもしれない。

「給食で出たサバの味噌煮にあたったのかもしれない」

「それ、私も食べたんだけど」

 確かに、彼女の姿は、くしゃくしゃの長髪でしわいっぱいの魔女とは違うような気がした。

 

 そんな、小学生時代のたわいもない出来事を急に思い出したのにはわけがある。

 今、リビングで見ているテレビ、そこに彼女が映っているのである。

[女子バレーボール日本代表金メダル! まさに東洋の魔女復活です!]

 テレビには、あの時の彼女がいた。中学から始めたバレボールで、日焼けはなくなったものの、男子に間違われそうなショートカットは今も健在である。

「何度同じシーン繰り返し見てるのよ。本人がちゃんとここにいるでしょう」

 テレビと同じショートカットの彼女は僕の隣に座った。

「やっぱり君は魔女だったんだ」

「……何か悪いものでも食べた?」

「サバの味噌煮」

「……いつ食べたの?」

 やっぱり、彼女は魔女だったけど、あまり魔法を使わないタイプのようだ。僕と彼女の左手の薬指にはおそろいのリングがはめられている。魔女の魔法ってのは、なかなか解けることがないようだ。今も、そして、これからもずっと――。(了)