すみやきの小説置場

小説を書き始めた18歳から三十路の今に至るまでのすみやきの小説置場

とある未亡人の一日

「即興小説トレーニング」にて執筆。
http://sokkyo-shosetsu.com/ 
お題:嘘の弔い 制限時間:15分
 私の仕事は毎日、お葬式に出ることである。

 といっても私は尼さんでもないし、葬式の業者さんでもない。

 ここにいるお坊さんは、プロではなく私の同僚、隣で泣いている女の人も私の同僚。

 そして、その隣にいる喪服に身を包んだ男はお客様。

 この後、未亡人役である私を犯す予定のお客様――、ここは世にいうところのイメクラってやつで、しかも葬式のシチュエーション専門のクラブだ。お焼香から出棺までちゃんと再現するのが私の職場のモットーだ。

 今日もそんな特殊な性癖を持った男性がお金を払って私を犯しに来る。


 そして、今日もそんな相手とのお仕事が終わる。今日のお客さんは、また特殊で火葬場での私とのプレイをお望みだったので、かなり疲れた。というより、職場も職場だ。わざわざ柩を焼くところまで再現しなくてもよかろうに……。

 そんなことを思いつつ、私はプレイに満足したお客様をお見送りする。

 するとスタッフの一人が私に話しかける。

「あれ、もう一人のお客様は……?」

 もう、一人? 私がお相手したのはさきほどのお客様だけだ。

「いや、急に入ったんですよ。なんでも死体役をお望みだそうで」

 私は火葬場からあがる煙をただ見つめていることしかできなかった。